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EBUS画像スコアリング [臨床に落とし込むことで活きる]

Chest. 2021 Jan 9;S0012-3692(21)00027-1. doi: 10.1016/j.chest.2020.12.050. Online ahead of print.
Endobronchial Ultrasound Staging of Operable NSCLC: Do Triple Normal Lymph Nodes Require Routine Biopsy?

カナダの他施設グループから.

 

以前から,このCanada lymph node score (CLNS)の発表は学会で見ていましたが,これを臨床に応用した点は高く評価できます.

cN0の症例のうち,リンパ節が,1) CTでShort axis <1cm,AND 2) PETでNo hypermetabolic activity, AND 3) CLNS <2 となったものをTriple negative lympn nodeとして名付けて定義しています.ネーミングはともかくとして,このTriple negative lymph nodeをBiopsyする必要がないのではないか,というのがClinical question.

CLNSはMargins, Central Hilar Structure, Central Necrosis, Small Axis diameterの4つの因子でスコアリングします.

結果,Negative predictive valueは93.1%.

結論として,Triple negativeをBiopsyする必要がないとは断言していませんが,Nを増やして前向き試験をやっていくということで締めくくられています.

 

・考察

すこし掘り下げますが,ご存知の通りかなり前から,EBUS画像で見られるリンパ節の特徴を分類し,悪性・良性の検査前確率が論じられてきました.一番有名なのは,Fujiwara et al. Chest. 2010 Sep;138(3):641-7. doi: 10.1378/chest.09-2006.の論文でしょう.そこからもいくつか悪性リンパ節を予測する特徴やスコアリングの論文が出てきました.

しかし,欠点もあります.それはエコー画像の白黒画面を観察者が見て,それを分類しているということです.これは観察者内で統一した見解がないと,大きく所見がぶれてしまいます.どのくらいの所見をCentral Necrosis有りととるのか,Central hilar structureの有無は,静止画一枚だけでは難しく,きちんとリンパ節全体をEBUSで観察した動画でないと見落とすこともあります.上記論文内では,観察者間でのスコアリングの一致率や,観察者内でのブレも一応結果は載せていますが.

この論文,CHESTに載るには,Nが少ないのでは?と思った方もいらっしゃるでしょう.私はこの論文のインパクトはもっと違う観点でとらえた方がよいと思います.それは,異なるモダリティの組み合わせによる検査前確率を実臨床の行動決定に大きく関わるところにClinical questionを置いたところにあると思います.採取するのかしないのか,です.

今までリンパ節の悪性・良性を推定する話(Optical biopsy)は,「でも結局病理検体採取するんでしょ,なら要らないじゃない」とよく言われていました.つまり,採取直前に見たEBUS画像を解析したところで,結局そのあと検体を採取するのであれば,解析しようがしまいが,EBUS-TBNAの診断能は高いので,意味がないだろうという論点です.確かに一理あるところですが,もし仮にその採取をスキップできたら,患者の安全・苦痛度は良くなりますし,医療資源の浪費削減につながります.

今回の結果だけでは,採取をしなくてよいという結論にはならないでしょう.143のリンパ節のうち8個(5.6%)が悪性であったこの数値をどう見るかですね.

 

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新しい明日へ!