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呼吸器インターベンション,Interventional pulmonologyのニュース,考察を配信します.肺の病気に対する安全で正しい診断,および非薬物治療のニュースです.

Augmented fluoroscopy [新しいNavigation toolとして活躍するか?]

比較的新しく出てきたNavigation systemとしてのAugmented fluoroscopy.簡単に説明すると,CT dataから作成された末梢結節の位置とそれに到達するまでの道のりを透視画像に投影できるという技術.簡単に説明してしまうとこれだけだが,これには様々な技術が盛り込まれている.

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↑Cited from BODYVISION homepage (https://bodyvisionmedical.com/)

末梢結節などの肺野の一点をターゲットとして3D構築して透視画像に載せる技術はCone-beam CTのソフトウェアとして備わっているが,このAugmented fluoroscopyは呼吸に合わせた結節位置やルートを特定のアルゴリズムを用いてあたかも同期しているように映すことができる.とりあえず今の時点でFDA認可を受けているのはLungVisionしかないが,これは患者の背中側にRadiopaque beadsのついたボードを置いてRegistrationに用いている.

今年は何本か論文がでている

J Bronchology Interv Pulmonol. 2020 Jul 8. doi: 10.1097/LBR.0000000000000697. Online ahead of print. Cone-Beam CT Image Guidance With and Without Electromagnetic Navigation Bronchoscopy for Biopsy of Peripheral Pulmonary Lesions

J Bronchology Interv Pulmonol. 2020 Jul 24. doi: 10.1097/LBR.0000000000000700. Online ahead of print. Prospective Analysis of a Novel Endobronchial Augmented Fluoroscopic Navigation System for Diagnosis of Peripheral Pulmonary Lesions

J Bronchology Interv Pulmonol. 2020 Oct 23. doi: 10.1097/LBR.0000000000000722. Online ahead of print. Augmented Fluoroscopy: A New and Novel Navigation Platform for Peripheral Bronchoscopy

特に設定が面白いのが1番目の論文で,Augmented fluoroscopyにElectromagnetic navigation を加えると診断率が上がりますよというもの.それぞれの技術が補填しあって,Multi-modalityにするのがいいですよ,という論旨.たしかにそうだが,CBCTで最後に場所も特定して,と医療資源的にあらゆる症例にできるような組み合わせとは言えないだろう.

 

考察.

AFは何のためのものか.これはNavigation toolです.間違ったルートに入っていっていないかがわかる.Targetへのルートを選べて,かつ透視で見えないようなTargetの位置も同定できる.ときおり出くわす難しい症例は,枝が選びにくくて,かつTarget到達までに素直な走行をしない気管支.この場合いくらスコープで見えている範囲で気管支を正しく選択したとしてもその先の末梢のルートを選ぶのに苦慮する.何度もR-EBUSを出し入れしてTargetに近づく枝を透視画像を参考に探すという症例.このような難しい症例では,AFは役立つかもしれない.AFで投影された他の気管支の走向を参考にして,正しい気管支に入っていないことに気付ける.また透視で見えないGGNのような場合,基本的にEBUS画像も分かりづらい.Blizzard signを探すが,それでもわかりづらい.GGNでかつ横隔膜や心臓に隠れるような位置に存在すると難関.そういうときにはTarget位置が投影されてわかっているのは参考になる.

しかし,あえて批判的に見てみる.上記のような症例はどのくらいあるだろうか? 多くの症例は可能な限りTargetに近づけるスコープで『正確に枝を選べば』,素直に到達でき,R-EBUSで確認できる結節ばかり.ごく一部の,透視で視認できなくて,かつ枝の走向がひねくれているTargetに限定して,効果が発揮されるツールのような気がする.そういう結節がどのくらいの割合なのかは施設によって異なるだろう.

とはいえ,重要なポイント『正確に枝を選べば』,ということ.これはほかでも何度も議論しているが,枝読みが得意で正確に挿入気管支を選べる日本の気管支鏡医はわりと簡単にできてしまう.今回のAFも,VBNもENBもそうだが,Targetまでの枝読みが完璧であれば,威力をそこまで発揮しない.なぜならこれらはNavigation toolだから.枝読みに自信がない,という気管支鏡医には強い味方になるだろう.

ここからは今回の話題としては蛇足かもしれないが,重要なので繰り返し言いたい.NavigationとConfirmationは違う.Targetまでの道案内と,ここがゴールですよと教えてくれることは別物であり,それぞれ独立して重要なこと.このAFを使ったとしてもConfirmationはできない.ConfirmationはR-EBUSやCone-beam CTで行われるが,これは枝読みがいくらできていても代替できないmodalityである.かと言って,今我々が使えるConfirmation toolも完璧ではない.なぜならこれだけではReal-time biopsyにつながっていないからである.R-EBUSでConfirmしてもそのあと生検デバイスを挿入するためにR-EBUSは抜かないといけない.経験の浅い気管支鏡医がやると,R-EBUSでConfirmしても,Biopsyしているとずれてくることがある.これでは小さなTargetを正しくSamplingすることはできない.今のところ,末梢結節に対してReal-time biopsyを行えるデバイスは商品化されていないが.リンパ節に対するConvex EBUSがあれだけの高い診断率を出せるのはReal-timeだからだ(採取するところをReal-timeに見ている).

話が横道にそれたが,今回は比較的新しいAFの技術について紹介した.これからエビデンスが蓄積されてくる分野だが,その効果が発揮される結節はどのようなものかということを少し考えるべきと思う.

 

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新しい明日へ!