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末梢肺GGO診断に対するUltrathin cryoprobe

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Transl Lung Cancer Res. 2020 Oct;9(5):1963-1973. doi: 10.21037/tlcr-20-957.

Shanghai Chest Hospitalから.

Cryoprobeによる末梢診断,とくにGGN(Ground glass nodule)にしぼったCase seriesです.ご存知の通りCryoprobeが気管支鏡に導入されて間質性肺疾患の診断が変わろうとしています.末梢肺結節の診断に適用しようというのは自然な流れで,そのためには従来の大きさではアクセス性および安全性の面で懸念されることがあったわけです.そこでさらに細いProbeを使用していこうという意図で開発されています.貴重なエビデンスのひとつです.

f:id:Reviewer2:20201121112205p:plainReferenced from doi: 10.21037/tlcr-20-957.

1.1mmの細さ.これはしびれますね.どの気管支鏡にもfitします.

論文内では取れた際の検体のマクロ像は示されてはいませんが,病理像のFigureを見るとさすがCryoprobeという病理像です.論文のFigureなのでChampion figureを持ってきているというバイアスを加味しても,GGNから採取してきた病理像としては秀逸.

Case series中,23のGGO.うち12がPure GGO.大きさは平均21.6mm.22のターゲットでEBUS-GS法でアプローチしていて,ENB併用が9個,VBN併用が14個(いまいちENBとEBUS-GSをどのように併用したのか記載がなく不明...).すべての結節はBronchus sign陽性.

うち21の結節(91.3%)でサンプル採取できて,19(82.6%)で診断がついた.そのうち悪性以外の診断を7結節含む.悪性以外のGGOもこれだけ診断できるのはかなり良い結果だと思います.

 

少し議論を進めます.肺野末梢GGNに対する経気管支アプローチによる診断率はどれくらいでしょうか.既報Ann Thorac Med. 2017;12(3):171-176. doi: 10.4103/atm.ATM_428_16. を引用しますが,GGN254例を後ろ向きに調べた解析で(GGNでこのnはすごい!),EBUS-GS+VBN+Fluoroscopyを併用しています.その診断率は65.7%でした.65%でも実臨床の経験として,高めかなというくらいの感覚です.それが今回とりあげたStudyではnは限定的ですが,82.6%の診断率.Bronchus signが全例陽性ということを考えても高いと言えます.

GGNの多くは,Fluoroscopyで見えないか見えてもよくわからないものが多いです.GGNのEBUS画像はBlizzard signという特徴的な像を示すことで知られていますが,しかし,ひとたび採取を始めてしまうとBlizzard signは認識できなくなってしまうので,EBUSでBlizzard signを見たらその場所を絶対に動いてはいけないというのが鉄則で,しかもターゲットが比較的小さい集団なので,場所を決める+キープするのがとても難しい.なので可能ならば初めの1回でそれなりに大きめの検体を取りたいところです.その点,Cryoprobeを使用するのはかなり理にかなっていると言えます.

このERBEのUltrathin cryoprobeは太GSのK-203ならば採取後GSを留置したままプローブを引き抜けるようです(K-201の細GSだと,GSごと引き抜く必要ありと記載あります).GSには止血目的に留置できますので,GSを使用するならばK-203を使用した方が引き抜き後に出血で慌てることは少ないような気がします.ただしこの出血のイベントについてはもう少し症例を集めてから議論が必要と思います.しかしながら,K-203を使用するとなると必然的にスコープ径は大きくなりますので,今度はGGNそのものへのアプローチ能が落ちるということになります.このジレンマは致し方ないですが,よりPeripheralにある結節ではさすがに1Tスコープで簡単に気管支を選択するのは難しいでしょう.症例を選ばないとこの組み合わせは難しそうです.アプローチという点では,MP scopeと合わせて使用するのが理にかなっているような気がしますが,1.7mmのWorking channelではスコープを留置したままの検体の引き抜きができないかもしれませんね.ここもジレンマ・・・

このUltrathin cryoprobeにあわせて,外径が細くて(末梢へのアプローチ性),Working channelが大きい(スコープ留置したまま検体が引き抜ける,安全)スコープがあればベストですが,ニーズがニッチすぎますかね.

 

では

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新しい明日へ!