硬性鏡によるステント留置の際の麻酔方法 [自発呼吸よりも筋弛緩下調整換気]
今回とりあげる論文は,
Anesth Analg. 2020;131(3):893-900.doi: 10.1213/ANE.0000000000004544.
A Prospective, Randomized Trial Comparing Respiratory Status During Anesthesia for Airway Stenting: Spontaneous Respiration Versus Controlled Ventilation With Muscle Relaxants
前向きRCTによる,自発呼吸VS筋弛緩薬併用調整換気
名古屋医療センターからの報告.さすがという感じです.
自発呼吸群(SP群):Induction with Propofol TCI at 1.0 mg/mL and remifentanil at 0.1 mg/kg/min. FiO2 1.0
筋弛緩薬併用調整換気群(MR群):Induction with Propofol TCI at 3.0 mg/mL and remifentanil at 0.5 mg/kg/min, + Rocuroniumu at 0.6 mg/kg, Pressure-limited controlled ventilation, FiO2 1.0
Primary endpoint: SpO2 95%未満になるイベント数
結果:SpO2 95%未満のイベント,SP群 24/32 75% VS MR群 3/31 9.7% (P<0.001)
平均の狭窄度はSP群74.5%,MR群76.4%.施行時間:SP群76.3±47.0 min VS MR群58.8±30.7 min.
硬性鏡の麻酔方法は施設に依存する形だと思いますが,それでいてきちんとRCT試験を組んで結果を出すというのが素晴らしいですね.手技に関連した低酸素イベントはその狭窄度やインターベンションの難易度にも大きく影響を受けるので,完全にランダム化というのは難しいにせよ,狭窄度の平均はそこまで乖離はないようです.明らかな有意差をもって筋弛緩薬併用調整換気群がSpO2 95%未満への低下が少なかったということになります.低酸素イベントの定義をSpO2 95%で区切った理由も本文中に述べられていますが,特に気管の狭窄では急落することがあるので早めにアクションを起こすというのは賛同します.個々のデータは示されていないですが,SP群のSpO2の最低値の平均が92%程度であり,FiO2 1.0で換気していてもなおインターベンションではそれくらい下がるということですね.(一方MR群の最低SpO2平均は97.7%)
一方で,中枢気道に極めて高度な狭窄をきたしている場合には,自発呼吸を止めることで陽圧換気で入らなくなることもあるという話は聞いたことがあります.あくまで狭窄度75%前後の狭窄に対して気管ステント留置した際のデータであることには留意すべきだと思います.
新しい明日へ!