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Electromagnetic navigation bronchoscopy -Review

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Sensitivity and Safety of Electromagnetic Navigation Bronchoscopy for Lung Cancer Diagnosis: Systematic Review and Meta-analysis.
Folch EE, Labarca G, Ospina-Delgado D, Kheir F, Majid A, Khandhar SJ, Mehta HJ, Jantz MA, Fernandez-Bussy S.
Chest. 2020 Oct;158(4):1753-1769. doi: 10.1016/j.chest.2020.05.534. Epub 2020 May 23.

 

Electromagnetic navigation bronchoscopy 略して,ENB,

(Electromagnetic navigationでEMNの略もたまに使われます)

 

日本では数施設のみが使用している比較的新しい技術になりますが,よく例えられるのは,GPSで誘導してくれるカーナビ,しかし,個人的にはカーナビと同じと考えてはいけないと思っています.それは後半に説明しますが,

 

世界的にはENBの歴史は意外に古く,エビデンスはそれなりに集積されています.これまでにReviewは複数でています.

2014Gex論文と呼ばれるRespirationのReviewを参考にしていましたが,最近,タイトルのReviewがでて更新されました.

Sensitivityは77% (95% CI, 72%-82%; I2 = 80.6%)

Pneumothorax 2.0%, Minor bleeding 1.0%, Major bleeding 0.8%

 

ほとんどのENB systemがSuperDimensionを使っています.いくつかのStudyでSPiN systemが含まれています.

SuperDimensionでいうと,Extended working channel (EWC)といういわゆるガイドシースの大きい版を使って,デバイスを入れ替えます.はじめはLocatable guide(LG)を一緒に挿入してナビゲートされます.(LGの先端にセンサーがある)

 

これにR-EBUS(ラジアル型)を組み合わせるといいですよ,というのが,あの有名な2007Eberhardt論文です.

Multimodality bronchoscopic diagnosis of peripheral lung lesions: a randomized controlled trial.
Eberhardt R, Anantham D, Ernst A, Feller-Kopman D, Herth F.
Am J Respir Crit Care Med. 2007 Jul 1;176(1):36-41. doi: 10.1164/rccm.200612-1866OC. Epub 2007 Mar 22.

この論文も今の気管支鏡医からすると当然だろうね,という感想なのですが,それをきちんと3群(R-EBUS vs ENB vs R-EBUS+ENB)で比較したことに価値があったと思います.

 

あえて,ENBの弱点を書くと,

それ単体ではあくまでElectromagnetic fieldを使って,ここら辺だよ,というのを立体的にVirtualに示しているだけなので,ピンポイントにターゲットの採取場所を狙うにはR-EBUSで位置をConfirmするプロセスはスキップしてはいけないです.(ターゲットが大きいなら別にいいけど)

2cmない大きさの末梢結節を狙うのならば,基本的に,ENBはナビゲーションのツールであって,Confirmするためのツールではないことに留意すべきだと思っています.

 

前半に,カーナビに例えられるという話を出しましたが,個人的にはあまり好きな表現ではありません.なぜならこのナビはリアルタイムではないからです.

ENBに用いる立体再構築の画像は,事前のCTから作られます.大きく住所が変わらないならOKですが,呼吸運動でずれる気管支のルートを1mmのくるいもなしにナビするのは難しいでしょう(呼吸運動を考慮したルートの補正アルゴリズムは含まれていますが).なのでやはり小さめの結節を狙うにはこのナビにプラスしてConfirmするツールを併せる必要があります.

 

それから検体採取している最中はセンサーのついたLGを抜去しているのでリアルタイムモニタリングされていません.(VeranのSPiNにはついてますが.)

 

しかし以上のような弱点を考えても,

このナビなしの診断率と比較すると飛躍的に上がるのでそのナビゲーション能力は秀逸です.

SuperDimensionの大規模研究のNAVIGATE studyの最終報告が待ち遠しいですね.